「ペプシノゲン検査」(またはペプシノーゲン)というのはご存知ですか?
会社の健康診断の血液の項目で目にしたことのある方もいらっしゃるのではないかと思います。
このペプシノゲンは胃粘膜の分泌腺から胃の中に分泌されるもので、胃酸によってペプシンというタンパク質を消化・分解する酵素になって働きます。そしてそのうち約1%が血液に流れ出すため血液検査で測定が可能なのです。
★「ペプシノゲン値が低い」=「胃粘膜が老化&萎縮」
ペプシノゲンの分泌量は胃の粘膜の状態により変化します。
萎縮した粘膜(=老化やピロリ菌によって起こる元気の無い粘膜)になると、ペプシノゲンの分泌は低下します。
皮膚で言えば、肌の老化がすすむとシワが多くなってカサカサしてくるのと同様に、胃の粘膜も老化が進むとシワが多くなり、ペプシノゲンの分泌も減ってくるのです。
ということは、ペプシノゲン(PG)の血中濃度を調べることにより、胃の粘膜の健康度がある程度わかると考えてよいのです。
★「胃粘膜が老化&萎縮」=「胃がんになりやすい」
胃がんの多くは、萎縮の進んだ元気のない粘膜から発生します。
「萎縮性胃炎は胃癌の発生母地である」という言われ方をします。
(参照)萎縮性胃炎
・・・・つまり、会社の健康診断でペプシノゲン値が低いと、三段論法的に「胃がんになりやすい」ことになるので、「精密検査(胃内視鏡検査)を受けてください」ということになるのです。
もう少し詳しく書くと・・・
ペプシノゲンはペプシノゲンI(PGI)とペプシノゲンⅡ(PGⅡ)に大別されます。
・ペプシノゲンI・・・主に胃底腺の主細胞(胃の下半分;胃底部や胃体部にある)というところから分泌されます。
・ペプシノゲンⅡ・・・主に胃底部のほか噴門腺(食道と胃のつなぎ目付近)・幽門腺(胃の出口付近)・十二指腸腺(十二指腸の付近)など、胃全体から分泌されます。
胃の粘膜の萎縮が進むと、胃底腺領域(胃の下半分)が縮小していくためペプシノゲンIの量が相対的に減ってくることになります。そこで、検診では、ペプシノゲンI/ペプシノゲンⅡ比をもって判定している施設が多いのです。基準値(正常値)は、ペプシノゲンI(PGI)値≧70ng/ml、ペプシノゲンI/ペプシノゲンⅡ比≧3.0とされています。
・・・・でも、ちょっと注意!
★ペプシノゲン検査に頼りすぎは危険
「ペプシノゲン検査」は採血だけで行えて簡便なのですが、盲点もあります。
このペプシノゲン検査は上に書いたように胃の粘膜の萎縮・胃の老化度を検出する検査です。
直接胃がんを検出する検査ではないため、見逃されるタイプの胃がんが少なからず存在するのです!
萎縮性胃炎を経ずに、元気な胃粘膜からいきなり発生する胃がんに対しては「ペプシノゲン検査」は無効であることは自明です。
そのような理由で、医療機関が診断目的でペプシノゲン検査を行うことはまずありません。
胃がんを見逃さないようにするためには、やはり年に1回の胃内視鏡検査を受けることが必要なのです。