こんにちは、横浜市胃腸科のららぽーと横浜クリニックです。
寒い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか…
皆さんは、「リンパ腫」という言葉を聞いたことはありますか?
「リンパ腫」はいわば血液中のリンパ球の癌です。
では、胃マルトリンパ腫という言葉は聞いたことあるでしょうか…耳にしたことがある方は少ないと思います。今回はそんな「胃マルトリパ腫」についてご紹介したいと思います。
胃マルトリンパ腫はこうした胃のリンパ濾胞(ろほう:体の組織である卵巣、甲状腺、下垂体などの内分泌腺にある完全に閉じた袋状の構造)から発生する腫瘍と考えられています。
マルトリンパ腫は一般に良性の経過をたどりますが、しかし、時に大細胞型びまん性リンパ腫という悪性リンパ腫へと移行することがあります。
なお、リンパ球にはBリンパ球とTリンパ球とがありますが、マルトリンパ腫はBリンパ球の腫瘍です。また、胃のリンパ腫はマルトリンパ腫も含めて、胃がんに比べて非常に珍しい病気です。
マルトリンパ腫は、理論上は体の中のどこにでもできるのですが、胃に限っていえばその約80%は、慢性胃炎・胃十二指腸潰瘍・胃癌の原因であるヘリコバクター・ピロリ菌の感染が発生原因となっています。
胃の中には塩酸が存在するので、細菌は通常は殺菌されてしまうのですが、ヘリコバクター・ピロリ菌は胃酸を中和する機能を備えることで胃の内部でも生存でき、さまざまな病気を引き起こします。
ただし、ヘリコバクター・ピロリに感染していても、実際にマルトリンパ腫になる人は極めてまれです。感染者のうちのどのような人がマルトリンパ腫になるのかは、まだよくわかっていません。
一方、残りの20%の原因については、その約半数はAP12MALT1という遺伝子の異常が原因であることがわかっています。この遺伝子異常がどうして生じるかは、よくわかっていません。
さらに残りの半分については、今のところ原因はまったく不明と、謎に包まれている病気です。
症状があらわれる場合でも軽い場合が多い傾向にあります。主な症状は下記の通りです。
・腹痛
・胸やけ
・上腹部の不快感
・吐血(時に)
など…
多くの人は症状がないので健康診断などで発見される場合が多いです。
確定診断に至る唯一の検査は胃内視鏡検査です。
胃内視鏡でマルトリンパ腫が疑われたら、生検を行い病理検査で診断を確定します。診断には通常の病理検査に加えて、さまざまなリンパ球の特殊染色検査や遺伝子の検査などを行います。
また原因を明らかにするために、ヘリコバクター・ピロリに関する検査(尿素呼気試験、抗体検査など)を行う場合があります。
内視鏡および病理検査でマルトリンパ腫であって、悪性リンパ腫ではないと判断された場合は、ヘリコバクター・ピロリの検査を行います。
いかがでしたか?
マルトリンパ腫は自覚症状があまりなく、健康診断で見つかることが多いです。原因は主にピロリ菌であるため、除菌に成功した約80-90%の人は胃マルトリンパ腫が完治します。
除菌を行っても治らない場合や逆に進行する場合、悪性リンパ腫になってしまった場合や原因不明の場合は放射線療法や薬物療法、手術の対象です。
ピロリ菌は様々な病気の原因になります。胃マルトリンパ腫の原因にもなりますので、ピロリ菌は陽性と診断された場合は除菌を行いましょう。
ちなみに、胃マルトリンパ腫の治療を受けた結果、上手くいった場合であっても、すっかり腫瘍がなくならないケースがあります。
この場合は腫瘍が大きくなっていないかどうか、定期的に経過を観察する方法が選択されますので、1年に1回は胃内視鏡検査を受けるようにしましょう。