こんにちは。横浜市胃腸科のららぽーと横浜クリニックです。
今回は胃癌(いがん)についてのお話です。「癌は高齢者に多い病気だから」とか「自分はまだ若いし、胃癌は大丈夫でしょ!」と思ってるあなた!
若い人であっても胃癌は発生しうる怖い病気です。胃癌の中でも「若年性胃癌」にスポットを当ててお話しします。
まず、胃癌とは胃の壁の最も内側にある粘膜の細胞が、何らかの原因で癌細胞に変化し、それが増えてしまうことで起こる病気です。
原因としてよく言われるのは、ヘリコバクターピロリと呼ばれる菌の感染です。このピロリ菌は胃癌発症のリスクを高めるとされています。また、喫煙や食生活の乱れなどの生活習慣も関係していると言われています。
……と、ここまでは「胃癌」そのものの、一般的なお話です。
この胃癌の中に今回お話しする「若年性胃癌」、いわゆる「スキルス胃癌」という種類の癌があります。この癌の発症率は胃癌全体の1割程度となっています。
では具体的に若年性胃癌はどんな特徴があるのでしょうか。
若年性(スキルス)胃癌は、他の胃癌と同じように粘膜から発生します。この胃癌の特徴として、いや「厄介な点」は2つあります。
「癌細胞?浸潤(しんじゅん)?」と難しい言葉ですが、要するに「悪い細胞が周りの健康な細胞に広がるスピードが早い」ということです。
若年性胃癌は他の胃癌のように、潰瘍を作ったり、粘膜の表面が盛り上がるといった、見た目にわかりやすい変化はありません。それに加えて目には見えない胃の表面下の層を癌細胞が早いスピードで浸潤していくため、癌細胞がリンパなどのあらゆる臓器に転移しやすいという、胃癌の中で最も悪質な癌なのです。
ちなみに「日本人に多い」という報告もあり、粘膜の下を潜るように癌細胞が広がり早期発見が難しい、まるで忍者のような「厄介な癌」です。
もう1つの特徴は初期の頃には「癌特有の症状がない」ことです。
癌の初期に症状がないというのは大腸癌などでも同様ですが、上述したように早いスピードで病気が進行するため、転移した細胞が腸管を狭めて腹水が溜まったり、吐き気が続いたりなど、様々な症状が出てきた時には既に手術が不可能というケースも少なくありません。
癌の発見時に、腹膜転移(胃癌が大きくなり、内臓の壁を突き破り腹膜という内臓を覆っている薄い膜に癌細胞が散らばってしまうこと)をしている確率が、通常の胃癌では2割なのに対してスキルス胃癌は6割と言われています。初期症状がない上に進行が早いとこんな怖いことになってしまうのだから、本当に厄介です。
・若年性胃癌の原因は?
若年性胃癌は通常の胃癌とは違い、胃癌の原因としてよく言われるピロリ菌が若年性胃癌には関連がないという報告があります。また、遺伝性が強いとされていますがはっきりとした原因はわかっていません。
ここまでの説明から、若年性胃がんが特に怖い理由がお分かりいただけたでしょう。こんなに怖い癌だと、生存率が気になりますよね。
通常の胃癌は早期発見の場合、治療してから1~2年での再発が多いですが、5年以上経つと再発の確率が低くなります。その為、一般的には5年生存したことを目安に完治したこととなります。最近では、胃癌の早期発見などから胃癌全体での死亡率は減少傾向にありますが、スキルス胃癌の場合は、5年生存率が1割~2割とされています。どんなに言葉で説明しても、この生存率がこの病気が怖いということを認識させてくれるようですね。
この若年性胃がんはその名の通り「30~40代の若い女性に多い」ともされており、20代で発症することもあります。
原因がはっきりとしていないということは、予防しようにも対策ができませんよね。では胃癌の進行を防ぐためにはどうしたらよいのでしょうか。
有効と言えるのはなんといっても定期的な内視鏡検査での検診です。「内視鏡じゃないといけないの?」と思うかも知れませんが、若年性胃癌はNBI(狭帯域光観察)という内視鏡の特殊な光で病変観察しやすくしても発見が難しい病気です。ですから、バリウム検査等の胃内視鏡検査に比べて精密度の低い検査では、病変があっても見過ごされる可能性があり、バリウム検査で見つかる頃には時既に遅し……ということもあるでしょう。胃内視鏡検査で胃の中の状態を定期的にチェックすることにより癌の早期発見に繋がります。
若年性胃癌がいかに恐ろしく、若くてもなり得る病気であることがお分かりいただけたでしょうか?
確かに、胃癌全体でいえば若い人と高齢者とでは癌になる確率は若い人の方が低いといえるでしょう。ですが、このように年齢が若い人でも胃癌になり、死の危険に侵されることはあります。若い人ほど病気の進行は早いとも言われています。
「私はまだまだ若いから大丈夫!!」という考えが、一転して思わぬ展開に至ることもあります。これからの人生を長く楽しむためにも、定期検診は必ず受けましょう!