胃の検査、あなたはどちらを選びますか?
胃の検査は大きく分けて2つあります。
一つは胃透視、すなわちバリウム検査で、もう1つは胃の内視鏡検査、いわゆる胃カメラです。
・・・・「胃の検査は2種類ある」と言われたら、患者さんはどちらを受けるほうが良いのかわからなくなってしまいますね。
胃透視とはレントゲンにうつるバリウムという造影剤を飲んでいただき、胃の写真をとる検査です。
途中で発泡剤というガスの出るお薬をのんで頂き、胃を膨らませ「二重造影」という方法で胃の粘膜のでこぼこを浮き上がらせます。
胃のいろいろな角度から写真を撮りますので、レントゲン台の上でぐるぐる向きをかえて頂きます。
検査は通常10~15分です。一般の胃癌検診は、この胃透視検査で行っている場合が多いです。
内視鏡検査(胃カメラ)とは、食道、胃、さらに十二指腸を内側から直接見ることができる検査法です。
直径約9ミリ程度の電子スコープを口を通して胃の中に入れていくわけです。
直接胃の粘膜を見ることができるので、色の変化や細かい病気がよくわかります。
また病変部から組織を取って(生検)調べることが出来るので、癌の早期発見などに役立ちます。
検査時間は通常5~10分です。
でもこの両者の検査、果たして本当に胃癌が発見出来ているのでしょうか??
実は、何と!
胃透視を受けて異常なしと言われた方の中で、胃カメラを受けて何人も癌が発見されています!
つまり、胃透視の検査には限界がある!
胃内視鏡検査(胃カメラ)は、直接胃の粘膜を光で照らして診るわけですから、その色も凸凹もよく分かります。
さらに、怪しいと見れば、そこの細胞を取って病理検査でもって癌かどうか判定できます。
しかし、胃透視はいわば胃の壁にバリウムをぬりつけてその起伏を見るという、間接的な検査です。
だから、凹凸のない病変はまったく分かりません。
例えば胃カメラで見ると粘膜が少し赤く変化しているというだけの胃癌(凹凸は全くない!)は、胃透視では完璧正常に見えます。
(この場合は、いくら名医がバリウム検査を行ってもフイルムに写らないのですから、検査の性質上の限界であると言わざるを得ません)
つまり、胃透視は平坦な病変や、小さな病変はわかりにくく、おおまかな異常の有無を調べると考えた方が良いということです。
また内視鏡のように直接組織を取ったりすることができないので、胃透視で異常が認められた場合は、内視鏡での精密検査が必要です。
例えて言うならば、
胃内視鏡検査(胃カメラ)は、「人の顔を見て、その人が誰なのかを当てる」検査であり、
胃透視検査は、「人の影を見て、その人が誰なのかを当てる」検査です。
・・・検査の精度が大きく違うということがおわかりでしょうか。
ではなぜ、現在一般の胃癌検診では、胃透視検査を行っている場合が多いのでしょうか?
その理由は以下の通りです。
1、胃内視鏡検査(胃カメラ)よりも胃透視検査のほうが患者さんにとって楽だと一般的に信じ込まれているから
「胃カメラを飲む」よりも「液体のバリウムを飲む」方が楽なように聞こえます。ところが、実際には胃内視鏡検査(胃カメラ)の検査技術の驚速の進歩によって、技術ある医師にかかれば胃内視鏡検査(胃カメラ)を楽に施行できるようになっています。
2、胃透視検査は費用が安いから
概ねの値段を比較してみると、(10割負担と仮定して)胃内視鏡検査(胃カメラ)は15000円程度、胃透視検査は10000円程度です。
3、胃内視鏡検査(胃カメラ)は医師にしかできない技術であるのに対して、胃透視検査はレントゲン技師も施行可能だから
検診で多くの人数を検査する必要がある状況では、この事実は大きいと思われます。
4、胃透視検査の検査上の限界が、まだ世間一般には知られていないから
「バリウム検査で異常なし」と言われたから大丈夫!と信じ込んでいる患者さんは、いまだに非常に多いです。
私の知り合いの医師で、胃の検診で自分が胃透視検査を受けた、という方を見たことがありません。値段の差以上に、検査の精度が大きく違うことを実感として知っているからです。
医療が進歩するにつれて、胃透視検査で「大きな病気はありません」と言って済ませていた時代は終わりつつあります。私は、近い将来には胃透視検査(バリウム検査)は、廃れて医療界からなくなると思っています。
結論です。
「胃の検査、あなたはどちらを選びますか?」
⇒本当に胃の病気がないことを確かめたい方は、胃内視鏡検査(胃カメラ)を選んでください!